本が出来るまで8 本は読むよりも作る方がずっと楽しい

kokugobible2006-10-19

表紙やタイトルといった「カバーまわり」は、本の売れ行きを左右する大事な要素です。この頃はおしゃれな本が多いですよね。祖父江慎さんの装丁の本など、思わず手にとって見る方も多いのではないでしょうか。
表紙やタイトルは、編集者さんやデザイナーさんに全部おまかせしました。執筆していると、内容のことで頭がいっぱいで、はじめて手にとって見る人の気持ちになれなかったからです。また、その手のセンスが自分にないことも重々承知していましたから。
とりあえず要望として、「親しみやすくありながら、安直な企画物ではないことをアピールできれば」というようなことをお伝えしました。実際に塾で教えていて必要性を感じ、明確な問題意識を持って作ったものですから。
そういう意味で、表紙は傑作だと思います。初めて見たときは、「ふーん」という程度で実感がわかなかったのですが、落ち着いてみてみると、「ポップなのに格調高い」感じでいいですね。かわいいし、参考書としても一般書としても珍しい印象な気がします。
タイトルの『東大生が書いた「国語」のことを感動的に好きになる本』は、編集のツチエさんにつけていただきました。当初は、最後に「高校受験編」という語句もついていたのですが、幅広く売れる内容だからもったいないということで、外されました。これまた最初にタイトルを聞いたときには、「ふーん」という程度で実感がわかなかったのですが、落ち着いて考えてみると、よく言いえているなぁ…と思いました。内容が本当にそうなっているかはともかく、「国語を好きになってほしい」というのが最大の願いで、力を入れて工夫した部分で、また、他の参考書とは違う部分なので。
さて、帯には私の顔写真が載っています。「自分の顔で面汚しじゃシャレにもならないから」とかなり強硬に反対したのですが、「手にとってもらわないことにははじまらないのだから」「特に参考書だし、顔が見えた方が信頼感が出るから」…と説得され、載せることになりました。ちなみに、私の周りや、営業に行った書店さんからは、「芥川賞作家みたい」「実物よりとってもいいですね」と、大変好評です、カメラマンさんの腕が。
撮って下さった須藤夕子さん、本当に、ありがとうございました。大変光栄です。
写真云々の件は9月に入ってからだったので、最後までバタバタしていたわけですが、無事2006年9月22日発行で、世にでました。(ちなみに友人の彼女の誕生日でもある)。
本当に紆余曲折があったわけですが、めったにない素晴らしい経験でした。「本は読むよりも作る方がずっと楽しい」とはツチエさんの言葉ですが、至言だと思います。学生が本を出すのはやはり「非日常」ですが、決して「非現実」ではなく、いわんや「非連続」ではありません。多くの方のお力添えをいただきながら、地道な作業をひとつひとつ積み上げていって、ようやく出来上がるものです。そして、出来上がったからといって終わりではなく、今度はどうやって読者の元に届けるかという作業に連続していきます。このブログも、そうした作業の、ささやかな一環です。
これからも、内容の裏話や、載せられなかった原稿などを紹介していきたいと思います。ころちゃんともども、今後ともどうぞよろしくです。

本が出来るまで7 差し替え

あとで改めて取り上げようと想いますが、この本は、えらく引用が多い本です。「生きた教材を」という配慮から、様々なジャンルの様々な題材をとりあげました。見つけてきて原稿に取り入れるのも結構な苦労でしたが、許諾をとっていくのもかなり面倒な作業だったと思います。ツチエさんをはじめ、ダイヤモンド社のスタッフのかたにはご面倒をおかけしました。
さて今日は、「許諾」がとれなかったため、再校後に急遽差し替え原稿を書いた話です。
8月後半に一度差し替え原稿を書いています。その時は一週間くらい猶予がありました。
で、「もう大丈夫」という気持ちと、「このまますんなりはいくまい」という悪い予感が混ぜ合わさっていた9月4日14:25、第一報。「某ページで引用していた文献が掲載不許可に。発売までの日程はもう決まっていて動かせないので、申し訳ないが明日朝8時までに差し替え原稿を書いて欲しい」旨。かなり動揺して混乱している間にも、どんどん追加メールが。結局締め切りは夜9時にのびました(笑)。
差し替え原稿の何が難題かというと、時間がないため、著作権法の範囲内でしか引用が出来ないということです。つまり、たとえば歌謡曲等は許諾が要るため不可。いわゆる古典作品のほうが無難で好ましいことになります。でも、古典アレルギーの人は多いから、あんまり使いたくないんだよなぁ…。
いくつか腹案を考えて、ラフに原稿にまとめ、翌早朝に一度提出。一番推していた案でOKがでたので、そっから資料を集めて確認し、文面を推敲し、無事夜7時頃、2時間の余裕をもって提出できたのでした。
個人的には、急遽書いた割にはうまく書けたと思っています。どこを差し替えたのかお分かりになりますかな??
差し替え前の原稿も気に入っていたので、日の目を見なかったのは残念です。ちょっと公表できないので、興味のある人は私と個人的に親しくなって見せてもらってください。

それはまた別の話

好きで使っているセリフです。
出典は、ビリー・ワイルダー監督の「あなただけ今晩は」。バーのマスターが言うセリフで、元は確か“That's another story”。このワイルダー監督も主演のジャック・レモンシャーリー・マクレーンも、個人的に大好きです。同じ組み合わせで「アパートの鍵貸します」があります。
ワイルダーは、コメディーの名手で、実に洒落ている。セリフ回しや、伏線の張り方が、実にうまいのです。「情婦」というサスペンスもあって、これもまた秀作。
古畑任三郎などで知られる三谷幸喜ワイルダーの大ファンで、ワイルダーの生前インタビューをしています。代表作「王様のレストラン」では、ナレーターの森本レオが、毎回この「それはまた別の話」というセリフで締めていました。

あなただけ今晩は [DVD]

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王様のレストラン DVD-BOX La Belle Equipe

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本が出来るまで6 編集

先日のNHKの「プロフェッショナル」で、幻冬舎石原正康さんが特集されていましたね。文芸作品かどうかの違いはありますし、私はプロの作家ではないので気楽なもんでしたが、それでも執筆時を思い出して感慨深いものがありました。
原稿を書く作業はすばらしく孤独ですが、同時にまた、決してひとりでは出来ないものでもあります。たとえば、説明の流れをどうするか、解説の方法、その他たくさんの懸案事項を、編集者さんと相談しながら、形にしていきました。
今回は、編集者さんがふたりついてくださいました。ダイヤモンド社のエースにして出版甲子園の審査員長ツチエさんと、文春の「未来を切り開く学力シリーズ」など教育系の本を多く手がけられているタナカさんです。
私が書いた原稿は、Wordソフトでずらずら横書きされているだけなので、まずタナカさんが、内容や文章を整理し、おおまかにレイアウトします→次にデザイナーさんのところにわたされ、イラスト描き、ページわりふり、書体や見出しのデザインなどがなされて、ゲラ(校正用の試し刷り)が作られます→で、ツチエさん、タナカさん、校正者さん、そして私がそれぞれゲラに赤字を入れて推敲&校正→タナカさんが最終判断して、各人の修正を1つのゲラにまとめ→デザイナーさんのところにもどされて再編集→ふたたびゲラ(再校)→同様に修正→確認→印刷作業…といった流れになります。

↑(私のラフ絵を参考にデザイナーさんがイラストを書いてくださる。p115の例)

さて、今回、特に初校ゲラの修正量は半端じゃなかったのでした。いざ活字になって実際の形にレイアウトされると、全然感じが違うものです。自分で書いた文章ながら、あまりにヘタクソで読みにくい。また、編集者さんの手が入ると、内容は正確で分かりやすくなるのですが、どうしても全体のリズムが崩れます。そこで、それこそ句点の有無まで気をつかい、かなり細かく文章を直しました。よくある言い回しや説教臭い自己満足表現を徹底的に排除して、楽しく平易な文になるよう努力したものです。


↑(もう一から書き直した方が早いんじゃないかっていうくらい修正が入りまくって真っ赤になってしまったゲラ。文字通り「血のにじむような」努力。p30-31、p66-67あたり。画像は、私のを含め各人の修正をまとめ、タナカさんがデザイナーさんに提出した初校ゲラ)
加えて、特に問題解説のレイアウトにこだわりました。入試問題を載せると、どうしても○×だけが気になって、解答に至るプロセスや根拠はおろそかになりがちです。また、問題を解くときは視点がミクロになりがちなので、問題を再掲して解説し、俯瞰的に見る感覚をつかんでもらいたかったのでした。というわけで、「問題を見開きにおさめて再掲し、重要な文はアミカケにして目立たせ、同時に解説を近くに書き込む」という、デザイナー泣かせの要望をだしました。(特にp98〜99や、p301〜302の解説部分など、相当苦労なさったはずです)。
ゲラになった後の修正は、手間やコストがかかります。しかし、「私はお金が欲しいわけじゃない!ヘタなものをだしたら恥ずかしくて一生後悔する!」という想いと、修正が必要な理由を、死ぬほど述べてお願いしたら、かなり全面的に採用してくださいました。本当にありがたいことです。
そんなこんなで、通常よりかなり時間がかかりながらも、7〜8月で無事編集作業が終わり、あとは印刷作業…だったのですが、まだまだアクシデントは重なります。でも、それはまた別の話。

あなたの大学に、参ります。

最近、このブログにあまり登場しなくて申し訳ないです…
一体何をやっているのかというと、今年の出版甲子園の決勝大会が近いのです!そのため、都内のいろいろな大学に毎日ビラ配りに行っている、というわけです。
もしかしたら、次はあなたの大学に行くかもしれません。若干不審な輩たちかもしれませんが、ビラを渡されたらすぐにしまわずに、読んでやって下さい(笑)
なかなか会えない大物編集者さん、「さおだけ屋」の山田真哉さんなどが審査員にやってきます!
損はさせませんので、観に来てやって下さいな☆
詳しくは…http://shuppankoshien2006.picaso.jp/をご覧下さい!

周囲の反応

発売されてからだいぶ日にちもたちまして、直接&間接の反応をぼちぼちいただいています。知る範囲ではおおむね好評のようで、ウハウハです。(まぁ、面と向かって悪口は言いにくいでしょうし、面白くなかったらわざわざブログで取り上げないでしょうから当然なのですが)。
ちなみにまわりの人間に「本出したんだー」と紹介すると、代表的な反応は「うわ、帯に顔写真がある!」(しかも往々にして実物よりいいという反応つき)、「分厚い」、「で、印税入るの?」の3つです。…おねがい、もう少し中身も見てみて(泣)。
ここでは、主に中身に対する踏み込んだ反応・感想を取り上げます。

  • 表紙がかわいい。イラストがかわいい。題名がいい。編集がいい。…はい、どれも私の仕事ではありません。。。(._.)  えらいのはデザイナーさんと編集者さん。
  • レベル設定に難あり。あまり高いレベルにはむかない。…中学生をメインターゲットにして、国語が得意でない人、苦手意識のある人に、興味を持ってもらいたい!!という想いから、いろいろな工夫を考えました。作り自体は割としっかりしてますし、注釈を始め発展的知識も多いので、同時に大人でも(むしろ大人の方が?)楽しめるのではないかと思っています。
  • 分かりやすくて面白い。引用が豊富で楽しい。…ありがとうございます!まさに力を入れた部分!
  • なんとなく分かっているものを、論理だてて文章化すると確かにこうなるよなぁ…と感心した。はせがわが書いたにしては中身がまともだ…たとえば、「論理とか客観の概念を知らない人に、論理や客観を説明するとしたらどうすればいいだろう」と考えて考えてあの内容に落ち着きました。仮にも参考書と銘打つからには、ひねくれずに素直な内容をこころがけました。
  • 注釈がすごいね…本文を素直にした分、脱線したり、ひねた見方をした内容が、注釈に詰まっています。これでもだいぶ削ったのですが(苦笑)。本文とは違う説が載っていたり、中学生が知るわけないような昔の話題、トリビア、発展的内容などが満載で、注釈だけで1冊できるんじゃないかと思っています。

多くの人が、きちんとわたしの意図通りに読んでくれていて、嬉しく思います。
やはり、全力で書いたからには反応は気になるものなのです。直接でも間接でも、ぜひ感想を聞かせてください。内容に対するツッコミや訂正もお待ちしております。というか、まずは皆さん買ってください!ぱらぱらでもいいから読んでみてくださいね!

黄昏の人生のメリーゴーランド

昨日、BGMをワルツにしていた時期があったことを紹介しました。具体的にはこんなのデス。

イマージュ

イマージュ

この中に、加古隆の「黄昏のワルツ」というのがありまして、NHKの「にんげんドキュメント」のテーマ曲でした。せつなくて好きなんですねぇ。おなじみ宮崎駿ハウルの動く城」のエンディングテーマ。2曲目に、テーマ音楽「人生のメリーゴーランド」が収録されてます。これもよく聴いたなぁ。メリーゴーランドというよりジェットコースターか高速コーヒーカップっていう感じの日々でしたが。
あとはチャイコフスキーくるみ割り人形の「花のワルツ」なんかをよく聴いていました。