日本語力2

巷で出回っている、「日本語力をつける」だとか「国語力を身につける」といった本の多くは、語彙に重点が置かれています。すなわち、漢字や熟語や慣用句を覚えるという方向性ですね。
たしかに、言葉を知っていることは重要です。語彙の問題が、多くの人にとって文章を読む際の大きなハードルになっていることは分かります。でも、「語彙=国語力」という考え方には、やはり違和感があります。ことばとことばをどうつなぐのかの方が、ずっとずっと大事だと思うからです。
ちょっと卑近な例を挙げましょう。「主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました」。一時期流行った、スパムメールの件名だそうです。あまりに突拍子もない件名に、スパムと分かっていても目を通してしまう人が続出したとか。
あらためて言うまでもないですが、これ、オオアリクイだからいいんですね。虎だとか狼だとかピラニアだとかだったら、あまりに普通でつまらない。逆に、羊だとかウサギだったら、現実感がなさすぎる。
また、「1年前、主人がオオアリクイに殺されました」でも、ちょっと違うんですよねぇ…。
そう、どんなことばをどうつなぐかで、印象や意味合いが全然違ってきてしまうのです。そしてもちろん、文と文とのつなぎ方もそうです。並列関係だとか因果関係がぐちゃぐちゃになっている例ってよくありますよね。
つなぐ工夫や、つながれ方を読み取る力が、国語力の一端なのだと思います。