日本語力1

テレビで「クローズアップ現代」を観ていたら、若者の日本語力についてとりあげられていました。
主に語彙力についてでした。たとえば某企業では、マニュアルの中の「差異」という言葉が分からなかった社員が必要な措置をとらず、損益を出した、と。
語彙力低下の一因は、携帯電話やパソコンの普及があるそうです。メール・チャット・SNSなどでは、簡単な日本語が好まれる傾向があるし、まともに読み書きをしないので、言葉を覚えないのではないかと指摘されていました。そこで企業によっては、社員に対して音読や書き取りを課しているようです。これはまさに、斎藤孝氏の「声に出して読みたい日本語」、ポプラ社の「えんぴつで奥の細道」など、出版界のトレンドとも重なります。
日本語力をつけるために「音読」や「書き取り」というのはよく分かるのですが、これだけでは足りないのではないかなぁ…と思っています。それは、「興味」。「言葉に対する敏感さ」と言い換えてもいいかもしれません。「この言い方はしっくりくる」とか、「いい響きだなぁ」ということへの感性です。音読や書き取りというと、すぐに古典や名作といって、たとえば源氏物語とか森鴎外が題材にとりあげられるとような気がしますが、それは多くの人にとって高すぎるハードルな気がするのです。
キャッチコピーでいいじゃないですか。個人的に最近気に入ったのは、「せっかく忘れかけてたのにラジオがコブクロなんか流すから」。歌声と、菅野美穂さんの涙があいまって、実に印象的なCMだったように思います。平易な言葉でも、工夫すれば途端に言葉が輝きだし、人の心をつかむのであります。
それならそのまま歌詞でもいいでしょう。椎名林檎さんの歌で、難しい言葉を覚えた人も多いのではないでしょうか。山崎まさよしさんの「ため息だけが静寂(しじま)に消えていった帰り道♪」を聴いて、なるほど、静かな様子を表す言葉は、「静か」とか「しーん」とかだけじゃなくて、「静寂(せいじゃく)」とか「しじま」とかいろいろあって、それぞれ印象が違うんだということに気づいて、「いっちょ覚えてみっか」と思うほうが、ずっと自然で記憶に残ると思うのです。
日本語とか国語とかいわれるものの力をつけるまず一歩は、そういうきっかけからことばに興味を持つことなんじゃないかと思っています。