卒論の紹介

更新が滞っていました。いま卒論の真っ只中でひーひー言っております。
著書のプロフィール欄に書いてあるとおり、わたしの専門は「校正読み」です。誤字をどう見つけるかという観点から、人間がどう情報処理をして「読んでいるのか」ということにせまろうという分野です。
一口に「誤字」といっても、見つけやすいものも、いつまでたっても見つけられないものもあるはずです。その「見つけやすさ」は、人間がどう読んでいるかというメカニズムを反映しているのでは…というのが、出発点です。
たとえば同音異義語の発見は簡単だ(もしくは難しい)ということが分かれば、人は黙読しているときも「音」を使って読んでいることが分かります。
どうして誤字を読み落とすかを調べていて思うのは、人は「人はかなり読み飛ばしているんだなぁ」ということです。これは実体験としても分かるはずです。皆さんも、文を読むとき文字をひとつひとつきちんとととらえて処理しているわけではないはずです。特に漢字あたりを拾い読みして、あとは自分の頭でかなりの部分を補って、意味をつかんでいるでしょう。(前の前の文、「と」がひとつ多いのに気づきました?)
さて、文の意味をつかむくらいなら、誰でも飛ばし読みできると思うのですが、文章をざっと読むとなると、ある程度の技術が必要です。「どこに気をつけて読めばいいか」分からなければなりません。ちょっとややこしい文章ならなおさらです。
国語が苦手な人の多くは、どこが大事か分からない人が多いようです。「大事なとこに線を引いて」というと、全部にひき始めたりします。“そうではない、文章には「大事な部分」があって、あとはその説明だったり根拠だったりするのだ。”この感覚をつかんでもらうために、つまりは「立体的な読み方」をしてもらうために、本を書く際には説明にかなり力を入れました。p36〜p37の説明では、大事なところが浮き上がってくる感覚をつかんでもらうよう、レイアウトを工夫してあります。
国語というと、「ことば」のひとつひとつが注目されることが多いようです。昨日の「世界一受けたい授業」なんかでも、たとえば室町時代「一二三」はどう読むのでしょう、という問題がでていました。ちなみに正解は「うたた寝」。一二三と数える程の短い時間で起きてしまう眠りという意味だそうです。
こうした豆知識はたしかに面白いのですが、「ことば」をきっかけに、ぜひ「ことば」達が集まった「文章」の方も注目されたらなぁ…と思っています。つむがれた文章の中でこそ、ことばはいっそうの輝きを見せるのですから。