本が出来るまで6 編集

先日のNHKの「プロフェッショナル」で、幻冬舎石原正康さんが特集されていましたね。文芸作品かどうかの違いはありますし、私はプロの作家ではないので気楽なもんでしたが、それでも執筆時を思い出して感慨深いものがありました。
原稿を書く作業はすばらしく孤独ですが、同時にまた、決してひとりでは出来ないものでもあります。たとえば、説明の流れをどうするか、解説の方法、その他たくさんの懸案事項を、編集者さんと相談しながら、形にしていきました。
今回は、編集者さんがふたりついてくださいました。ダイヤモンド社のエースにして出版甲子園の審査員長ツチエさんと、文春の「未来を切り開く学力シリーズ」など教育系の本を多く手がけられているタナカさんです。
私が書いた原稿は、Wordソフトでずらずら横書きされているだけなので、まずタナカさんが、内容や文章を整理し、おおまかにレイアウトします→次にデザイナーさんのところにわたされ、イラスト描き、ページわりふり、書体や見出しのデザインなどがなされて、ゲラ(校正用の試し刷り)が作られます→で、ツチエさん、タナカさん、校正者さん、そして私がそれぞれゲラに赤字を入れて推敲&校正→タナカさんが最終判断して、各人の修正を1つのゲラにまとめ→デザイナーさんのところにもどされて再編集→ふたたびゲラ(再校)→同様に修正→確認→印刷作業…といった流れになります。

↑(私のラフ絵を参考にデザイナーさんがイラストを書いてくださる。p115の例)

さて、今回、特に初校ゲラの修正量は半端じゃなかったのでした。いざ活字になって実際の形にレイアウトされると、全然感じが違うものです。自分で書いた文章ながら、あまりにヘタクソで読みにくい。また、編集者さんの手が入ると、内容は正確で分かりやすくなるのですが、どうしても全体のリズムが崩れます。そこで、それこそ句点の有無まで気をつかい、かなり細かく文章を直しました。よくある言い回しや説教臭い自己満足表現を徹底的に排除して、楽しく平易な文になるよう努力したものです。


↑(もう一から書き直した方が早いんじゃないかっていうくらい修正が入りまくって真っ赤になってしまったゲラ。文字通り「血のにじむような」努力。p30-31、p66-67あたり。画像は、私のを含め各人の修正をまとめ、タナカさんがデザイナーさんに提出した初校ゲラ)
加えて、特に問題解説のレイアウトにこだわりました。入試問題を載せると、どうしても○×だけが気になって、解答に至るプロセスや根拠はおろそかになりがちです。また、問題を解くときは視点がミクロになりがちなので、問題を再掲して解説し、俯瞰的に見る感覚をつかんでもらいたかったのでした。というわけで、「問題を見開きにおさめて再掲し、重要な文はアミカケにして目立たせ、同時に解説を近くに書き込む」という、デザイナー泣かせの要望をだしました。(特にp98〜99や、p301〜302の解説部分など、相当苦労なさったはずです)。
ゲラになった後の修正は、手間やコストがかかります。しかし、「私はお金が欲しいわけじゃない!ヘタなものをだしたら恥ずかしくて一生後悔する!」という想いと、修正が必要な理由を、死ぬほど述べてお願いしたら、かなり全面的に採用してくださいました。本当にありがたいことです。
そんなこんなで、通常よりかなり時間がかかりながらも、7〜8月で無事編集作業が終わり、あとは印刷作業…だったのですが、まだまだアクシデントは重なります。でも、それはまた別の話。