本が出来るまで1 塾講師時代

ここをご覧になった編集のタナカさんに、「自虐ネタもいいですが、もっと自信をもってください。だいじょうぶですよ。」と励まされました。ありがとうございます。はせがわです。
さて、今回のお題は「素晴らしい企画が生まれたきっかけ」とのこと。うーむ。
もし、私がだした企画が「素晴らしいもの」であるなら、それはひとえに、当時の担当者(ころちゃんの前任者)がたいへん優秀だったからにつきます。私の奇妙キテレツな説明を理解して、日本語に直し、なおかつアピールポイントをうまくひきだして企画書にまとめてくれました。
でもネ、企画書のまとめ方も大事ですが、企画のためには、まず自分の体験や、想いや、考えが必要なのデスヨ。というわけで、企画の元になった塾講師時代の体験を紹介しましょう。出版甲子園が生まれるよりずっと前の話です。
わたしは大学1、2年の時、アルバイトで塾講師をしました。担当は中学生の国語。自分のときからそうだったのか、最近の傾向なのか分かりませんが、中学生の国語力はかんばしくありません。ことば知らないし、読めないし、書かせた文はむちゃくちゃです。
上司に相談しました。「どうもね、今の子供は、勉強はやらされてやるつまらないものだ、っていう刷りこみが強くあるみたいなんだよね。だからまずは、その思い込みを解いてやらなきゃならない。はせがわくん、そういうの得意でしょ。何があたるかわかんないから、とにかく乱反射的に面白い話してさ、興味を持たせることから始めるといいよ」。このアドバイスは、塾講師時代、そして本を書く上での、核となったものです。
と言うわけで、とにかく脱線しまくって、色んな話をしました。漱石の『夢十夜』を朗読したり、「『桃太郎』の冒頭を言ってごらん(以下略)」、「大河ドラマで『義経』もはじまったことだし、今日は『平家物語』のストーリーを語ろう(以下略)」などなど。
12月最後の授業では、サンタクロースをお題に作文を書いてもらいました。サンタクロースにまつわるエピソードや、中にはクリスマスに女の子に告白するショートストーリーを書いた人がいて、こちらも楽しみました。
あげくは、唐突に「先生、ディベートやりましょう」。教材を取りに、ちょっと教室を離れて戻ってみると、勝手に机の位置を動かして、生徒さんたちはすでに向かい合っている(笑)。…やりましたよ、ディベート。準備なし、アドリブで。
傍目から見れば適当かもしれませんが、芯は通っていました。知的好奇心を刺激すること、そして、活字媒体に慣れてもらうこと、です。それさえ達成できれば、子供たちは勝手に読んだり勉強したりするでしょう、夢物語のようですが、少なくとも理想はそうでした。
雑談だけでは飽き足らず、自分でテキストを作ってみました。プリントを数枚ホチキスでとじただけのものですが、結構好評でした。まず「論説編」を作ったのですが、要望に応えていくうちに「小説編」「詩歌編」「古文編」「作文編」と、5冊できました。親御さんから、「楽しいオリジナルプリントありがとうございます」というお手紙も頂きました。

このオリジナルテキストが今回の本の元となったのです…が、それはまた別の話、次回にゆずりましょう。では、ころちゃん、企画書ってどういうものなのか、何がポイントなのか、簡潔かつ大胆に、バシッと説明してあげてください!