ことばが世界を拓く

題名が『東大生が書いた「国語」のことを感動的に好きになる本』だけに、「これ読んだら、国語が感動的に好きになるんですね?!」と聞かれます。照れ屋の私は、「だいたい、本でも映画でも、“感動的”と銘打ってあって感動したためしがないよね」とまぜっかえします。
ただ、all-todaiのインタビューでも取り上げられている通り、この本は、やたらと引用が多いのが特徴です。これだけ取り上げられていれば、どんな人でも、どれか1つくらいは、親しみを持ったり、面白そうだと思ってもらえる作品に出会えるんじゃないかと思います。「そうか、こんな身近なところに“国語”がひそんでいたのか」。あるいは、「なるほど、これは面白いや、ちょっと読んでみようか」。こんな再発見、もしくは新しい世界への入り口を提供できたなら、それはある意味、読んだ人に「感動」を届けられているのではないか。手前味噌ですが、そう思います。
ですので、多岐にわたる身近な話題で、説明するよう心がけました。たとえば長澤まさみさん、柳家小さん師匠、ワールドカップサッカーの試合球、カロリーメイト聖徳太子お〜いお茶新俳句大賞などなど。
また、世界が広がるようにと、たくさん引用しました。というわけで、引用・言及した作品や作者を、ちょっと並べてみましょう。ころちゃんに数えてもらったら、100を超えます。(以下敬称略)

あだち充長嶋茂雄天才バカボン川島隆太、日経マガジン、藤原正彦、尾上圭介、鈴木孝夫養老孟司立川談志宮部みゆき室井滋素晴らしき哉、人生!(映画)、吾輩は猫である、青空のむこう、西尾維新自転車少年記、理由、博士の愛した数式あさのあつこ重松清石田衣良ロミオとジュリエット101回目のプロポーズひみつのアッコちゃん姫ちゃんのリボン8時だヨ!全員集合吉田美和紅の豚大岡信星野富弘金子みすゞ茨木のり子石川啄木、いつも何度でも、工藤直子俵万智網野善彦大野晋小松英雄堀辰雄のだめカンタービレ井上ひさし志賀直哉太宰治チンパンジーはちんぱんじん、野矢茂樹仮面ライダーフルトヴェングラー坪内逍遥吉本ばななハリー・ポッターラヂオの時間三四郎ズッコケ三人組赤川次郎坊っちゃん高村薫筒井康隆ミヒャエル・エンデ椎名誠乙一村山由佳星新一ぼくらの七日間戦争シャキーラ種田山頭火、咳をしても一人、谷川俊太郎桜井和寿大和和紀、Yes,Virginia,There is a Santaclaus、永井均

これでも一部です。
大変だったので、大人げなく主張しますが、引用って本当に面倒なんですよ。決して、人の功績で楽をしようと思ったわけではありません。ちょうどいいのを探して引っ張ってくるよりも、比喩や対句の例など、自分で作ってしまった方がよっぽど早い。でも、「生きた教材」に勝るものはありません。中学生にとって、国語の問題は、意外と重要な「入り口」なんじゃないかと思いますし。なるべく馴染みやすい現代の人気作家を取り入れようとし、またさまざまなジャンルを盛り込むよう心がけました。
自分が今まで読んだものの記憶を掘り起こして、もしくは、執筆のために資料を集めて研究しているとき出合った作品を、貪欲にとりこみました。
本のよさは、結局のところ本でしか伝えらないと思ったのです。先人のすぐれた業績のお力を借りて、自分の思いが少しでも伝わってくれればいいのですが。